参考資料

地下鉄13号線着工とほぼ同時の2001年7月に渋谷区が開始した「渋谷駅周辺整備ガイドプラン21委員会」は、2002年3月に「平成13年度とりまとめ」を、2003年3月に最終報告(「平成14年度版」)を発表して終了しました。それ以後、渋谷駅周辺整備に関して公式には何の協議会も開かれないまま3年半の貴重な時が流れ、2006年8月になってやっと、地元も参加する「渋谷駅周辺地域の整備に関する調整協議会」が開始されました。

この参考資料のページからは、「渋谷駅周辺整備ガイドプラン21委員会」の中間、最終の二つの報告書がダウンロードできます。また「渋谷駅周辺地域の整備に関する調整協議会」における配布資料をダウンロードできるサイトを渋谷区が運営しているので、そこへのリンクも張っておきます。

以下は、GP21委員会が終了してから3年余のブランクの後、渋谷駅周辺の都市再生緊急整備地域指定をきっかけとして、ともかくも渋谷駅とその周辺のあり方について発言できる公式の場(調整協議会)を地元が再び持つことになったいきさつです。都市再生法が事業者の主体性を最大限に尊重することによる(民活による)都市再生を標榜していることからすると、それは意外な展開かも知れません。

「渋谷駅周辺整備ガイドプラン21委員会」が実質的には終了した2002年12月以降も、非公式には(非公開では)、銀座線や埼京線ホームの移設や駅街区の敷地整序などについて行政機関や鉄道事業者の間の調整が続いていたようで、その一部は意図的にリークされ、新聞にも報道されました(2004.07.21日経新聞)。一方、地元(渋谷道玄坂 周辺地区まちづくり協議会)は、およそ渋谷駅周辺整備のような公共的な問題について、地元を含む利害関係者の間の公式の(公開の)協議を経ないまま、一部の人々の間で決定が重ねられていくのはおかしいと考え、「渋谷駅周辺整備ガイドプラン21」のパート2を開くよう、渋谷区や渋谷区議会各会派に毎年申し入れを重ねていました。

2005年11月になって東京都は、渋谷駅周辺地域の都市再生緊急整備地域指定を都市再生本部に申し入れました。申し入れを受けて同年12月に渋谷駅周辺の緊急整備地域指定が閣議決定されると、3年のブランクを一挙に取り戻さんとばかりに次々と検討会・協議会の類いが設置されことになったのでした。

まず2006年4月に「渋谷駅周辺基盤整備検討会」が、鉄道や渋谷川など渋谷駅をめぐる基盤整備のあり方の検討を目的として、東京都を中心に開始されました。同年8月には地域における情報共有と合意の形成を目指すとして「渋谷駅周辺地域の整備に関する調整協議会」が渋谷区を中心に開始され、同年10月には渋谷駅に直結する再開発の面的整備のあり方を検討するとして「駅中心地区まちづくりガイドライン検討会」が渋谷区と事業者によって開始されました。基盤整備検討会もガイドライン検討会も、その公式性に関しては疑問がありますが(公開性の欠如、地元の不参加)、ともかくもこうした検討会・協議会が2006年になって次々と設置された背景には、一つには地下鉄13号線工事や東横線地下化工事の進捗状況があり、もう一つには都市再生法の運用の機微があると思われます。

2001年6月の着工以来、地下鉄13号線(副都心線)工事は着々と進み、池袋・渋谷間は2008年6月の開業を目前にしています。工事は追い込み段階に入っているというのに、例えば渋谷川の移設(?)のような基本的な基盤整備方針が公式には決められていないという状況は、工事を遂行している者には困ったことでしょう。また副都心線・東横線の相互直通運転が開始される2012年12月には、明治通地下に現在建設中の安藤忠雄氏設計の「地宙船」が東横線の「新しい渋谷駅」なるわけです。その時までに、現在は地下工事の搬出入に使われている旧東急文化会館跡地を含む街区(文化街区)に「新しい渋谷駅ビル」が、しかも都市再生特別地区制度による大幅な規制緩和の実現として竣工していなければならないとすると、逆算して、そろそろ特区提案を東京都に提出しなければなりません。そして特区提案を受け取る東京都が、その前提として、周辺も含めた地区(渋谷駅中心地区)のまちづくりの指針(ガイドライン)、即ち「渋谷駅中心地区のまちづくりガイドライン」が地域でオーソライズされていることを求めたとしても別に不思議ではありません。後述するように渋谷駅中心地区には特区提案を目論む少なくとも5つの街区があり、それらがバラバラに創意工夫をはじめたら渋谷の未来は暗澹たるものだからです。

2012年というのは、2002年6月に10年間の時限立法として施行された都市再生特別措置法が廃止される年でもあります。しかしどうやら法が廃止される2012年までに竣工していなくても同法に基づく特区制度の利用は可能らしく、その年までに竣工するはずのない渋谷駅街区、東横線跡地街区をはじめ、駅周辺では道玄坂一丁目駅前地区、桜丘口地区など文化街区を含めて5つの街区が同法に基づく開発に名乗りを挙げています。それら5つの街区の事業者たちは、自分たちの特区提案の前提となる周辺も含めた地区(渋谷駅中心地区)のまちづくりの指針(ガイドライン)を策定するべく、渋谷区と一緒に「ガイドライン検討会」を開始し、更に渋谷区は、その検討内容に関する地域における共有と合意形成を目指すとして「調整協議会」を開始したのです。こうして「調整協議会」がまるでマンションの建築説明会のように始まったのですが、それを渋谷のよりよい未来に向けた建設的な協議の場にする必要が地元にはあったわけです。
(2007年12月)